Masakazu Yoshida

「すべて」と「ある」

2015-01-06 12:00

「すべての学生は携帯を持っている」の否定文はなんでしょうか。

もしかして「すべての学生は携帯を持っていない」のような文が思い浮びましたでしょうか。

残念でした。文法の上の否定文をつくるのであればOKなんですが、ここでは論理的な否定文でないといけません。

正解は「携帯を持っていない学生がいる」です。

論理学では、「すべて〜である」の否定は「すべて〜でない」ではなく、「ある〜でないものが存在する」です。

ちょっと直観的ではありませんね。

では、こう考えてみてはどうでしょう。命題「すべて〜である」の否定とは、もしその否定命題が真ならば、もとの命題を偽にするような命題を探すことである。そして、その探しものに対応する否定命題は、「〜でないものが存在する」になるのです。

逆に、「ある〜が存在する」の否定文はどうでしょうか。

同じ様に考えると、答は「すべて〜でない」になることが分ります。たとえば、「彼女をもっている男子学生がいる」の否定は、「すべての男子学生は彼女を持っていない」になります。

数学を学ぶことの意味の一つは、このように直観的でないものについて知ること、もっといえば、世界には直観的に知りえないものが存在する、という事実を知ることではないでしょうか。

クイズの出典: 日本経済新聞(2015年1月6日)コラム:おとなの数学

2015-01-06 補足: 数理論理学では、命題(proposition)には量子化された(「すべて」や「ある」が加えられた)言明は含まれません。したがって、厳密にいえば、上の文章における「命題」の使い方は誤りです。気になる方は、上の「命題」を広義の「言明」の意味に読み替えてください。